春と肝臓のお話      (H25.4)

  

「肝臓を 驚かしたる 余寒あり」

高浜虚子の春の俳句から頂きました。本当は「肝臓」ではなく「鎌倉」ですね。

東洋医学では、春は「肝」の季節です。

(夏は「心」、梅雨・秋雨は「脾」、秋は「肺」、冬は「腎」というようにそれぞれの季節に乱れやすい臓器があると言われています。)

 

肝臓というと真っ先にお酒を思いつく方も多いと思いますが、人体最大の

臓器である肝臓は大きさに違わず、とても役割の多い臓器でして、

弱らせてしまうと様々な症状が出てしまいます。

  

でもここで…

「わたしはお酒一切飲まないから」

「おれは病院で検査受けたけど何も言われなかったから関係ないな」

と、自分は関係ないと思うのは早計です。

 先ほども言いましたが、お酒だけが肝臓を弱らせる原因ではないですし、検査に出ていないからといって、今出ている症状に肝臓が関わってないとは限りません本当です。

  

その説明には『未病』が必要です。それは何か?

病気には、病院の検査ではっきりと数値に出る範囲のものと、このままの状態が続いたらいずれ出てくるが数値には

「今はまだ」出ていないに過ぎない『未病』

 いうものがあります。どこかで聞いたことがあるかも知れませんね?

数値には出ずとも、いわゆるサインというか、

徴候として症状が出てきている場合があります。

 今自分に出ている症状の側面は、

 これ以上身体を悪くしないで?

 このままだとマズイよ?という身体の声の場合があるのです。

今出ている症状のうちに、手をかけたり、

生活を見直すことを身体が求めてる

その手段としての気づきの表現が症状、というわけです。

  

では、肝臓の弱りや疲れで

どんな症状がよく出てくるのか?

例えば、

頭痛、頸肩の痛み、筋肉の強張り、

眼の痛み・疲れ・赤み、めまい、

梅核氣(喉のつかえ・違和感)、

イライラしやすくなる  など

これらは、病院ではあまり肝臓の関連は指摘されないものですね。

しかし、よく診られます。

もちろん検査で引っかかれば病院でも注意されますが、先ほども述べた『未病』の範囲では指摘されることはほとんどないでしょう。そして、

その結果原因不明とされて痛み止めや安定剤投与で終わるのです

これでは治りません。

 

肝臓が「沈黙の臓器」と揶揄される由縁は、よほど悪化しないと症状に現れないからと言われますが、そうではありません

症状で出ているのに、検査で出ないからそれは関係ない、とされているだけです。ちゃんと「助けてー」と言ってるんですよね。私の考えでは、未病の範囲でさえも将来検査で判明する時代はきっと来ると思います。まだ来てないだけだと期待してます。

 

それでは、ここで肝臓のはたらきと、さらに悪くするとどうなるかを

ご紹介しておきます。

 

 

<肝臓のはたらき>

  1. 代謝作用《代謝とは…体外から取り入れた物質(糖質・タンパク質・脂質・アルコール・乳酸など)を、身体の中で使い勝手の良い形や貯蔵しやすい形に変換する作業》                       ⇒身体にとって有害なものは無害化し(解毒作用)、身体に必要なもので余分なものは貯蔵しやすい形に変換してくれる。
  2. 血液凝固(固める作用)の為の物質(フィブリノーゲン)製造に関わっている。
  3. ビタミンB12を製造している。
  4. 体温調節機能に深く関わる。

 

 

 

<悪くするとどうなる?>

A)  筋肉や腱のケガが増える。

B)  疲れやすくなる。(やたら眠くなるが熟睡は出来ない)・足が重だるくなる。

C)  頭痛・めまい・肩や首の凝りが強くなる。

(疲労により産生された乳酸も処理されなくなる為、筋肉や腱に余計な収縮やコワバリを生んでしまいケガしやすくなってしまう。とくに右側の肩や首、腰の筋肉の凝りなどはよく現れる。)

(身体の有害物質などの解毒が出来ないと身体に老廃物がどんどん溜まってしまう。)

D)  太りやすくなる。

E)  胃腸に障害・異和感・膨満感などが起こる。

(脂肪の消化に使われる胆汁が作られなくなり、脂肪が消化されにくくなる。そして、脂肪の代謝、貯蓄にも関係が深い為、機能低下から太りやすくなる。それだけでなく、胆汁が産生されづらくなると胃腸の蠕動運動がしづらくなり、胃腸に障害、異和感、膨満感などにつながる。)

F)  痛風を起こす。

(アルコール代謝をしてくれる肝臓は、毎日許容限度以上のアルコールを取っていると、アルコール分解の際に発生するアルデヒド(猛毒)により、次々と肝臓の細胞が死んでしまい、死んだ細胞内から流れ出した「核酸」はやがて「尿酸」に変わるため、血中尿酸値濃度が上がり、限界を超えると結晶化して「痛風」を引き起こしてしまう。)

G)  出血しても止まりづらくなる。

血液凝固(固める作用)の為の物質(フィブリノーゲン)製造に関わっている。タンパク質の代謝作用も肝臓が行っていることが血液凝固にさらに関係深い。)

H)  高熱が出る。

(体温調節機能に関わりがある為、肝臓機能低下で出る高熱もある。)

 

以上の症状はあくまでも一部です。

例えば、肝機能低下に便秘が重なると

腸内で発生するガス(アンモニアなど)が

肝臓に負担を与え肝臓病をさらに重篤化させたり、

ガスが身体に回ることで、

先も挙げためまい、頭痛がさらに治りづらくなったり、脳に回り肝性脳症を

引き起こしたりなど病が病を呼ぶという事態も起こり得ます。

 

散々怖いことを書きましたが、脅かしたいわけでは無いのです。

肝臓が悪いなら、肝臓に優しい生活を心がけること、

ちゃんと治療を受けること。『未病』でも同様です。

むしろ『未病』のうちの方が治しやすいのですから。

 

では、最初に述べた「春は肝臓」についてです。

東洋医学の古典では、春は肝臓乱れやすいけど、

こういう風に生活しましょう。そうすれば大丈夫だよ、

乱れづらいよとも言ってます。

 

「春の過ごし方」

夜更かしをすることなく早く床に入り、朝は早く起き出でてゆるやかに庭を歩くようにする。急激な労働をすることなく、精神的には冬の間に深くしまいこんでいた志をおこさせてやり、万事のびのびとゆったりとさせておく。

 この養生法に逆らって心を緊張させたり、急激な労働をしたりすると、春に盛んに活動してしまう「肝」の臓器が傷害されて病となる。たとえすぐに発病しなくても、夏に影響が出てしまう。

東洋医学古典『素問・四季調神大論篇』より

 

夜は眠くなったら眠り朝は早く起きてゆったりと歩く。万事のびのびとゆったりさせておく。東洋医学の臓器の考えで、「肝臓はのびのびとした状態が好き」だからです。

三寒四温が春の特徴ですが、暖かかったり寒かったりと身体の体温調節機能は大忙しです。そして疲れやすくなります。その為眠くなりやすいんですね。「春眠暁を覚えず」まさにそれは自然な形なのです。いつもよりも早くとも夜眠くなったら眠るのが、この時期には適しており、そして朝は早く起きてその日の気候に身体を慣らしてあげる為に、お散歩してあげるのが良いのです。春という季節は、冬に活動が弱まった身体の試運転の季節なので、「急激な」とか「勢いのある」などという形容詞がつくような行動は慎まねばならないのです。

 

いかがでしょうか。およそ2000年前から今もなお受け継がれている

東洋医学の思想は長い時間と経験に裏打ちされた説得力を持っています。

もちろんこれだけやれば良いというものではなく、信頼できるかかりつけの先生がいたら、先生の指導をよく聞くことと、自分の身体を過信しないことです。

神経質になるのも困りますが、身体に優しくしましょう。

それでも良くならないなら、是非相談にいらして下さい。

お待ちしています。