☆消化器疾患

・60代 女性 腹痛

・20代 女性 過敏性腸症候群

 

60歳 女性 腹痛

 

主訴:胃が刺し込むように痛い

 

 あまり強い痛みの場合は当然病院に行ってもらうことになります。

しかし以前から通われている方なので、既往歴や体の状態を分かっていた為、診察による確認後、治療可と判断。この方の場合、普段から検査もしっかり受けて、その結果を逐一知らせて下さるので、把握しやすく、安心して治療も出来ます。可能性があるのは、慢性膵炎、胃炎などが考えられるが、昼間に強いストレスがあったことが原因に挙げられると推測。

 

 腹診はオッディ筋あたり(右関門)と瘀血に圧痛を呈す。筋性防御もあり、中脘、鳩尾、右関門あたりは固くなっている。

 脈:弦・遅。既往歴は多いが、今回の治療のお邪魔になりそうなものはあまりなさそうなので、副腎処置と瘀血処置だけでいけると判断。

 

 つまりは副腎皮質ホルモンの分泌を促すことで、交感神経の興奮を抑えることと、膵液の分泌を抑制することが叶う。膵液分泌の抑制はオッディ筋の緊張緩和も果たす。留鍼20分後、腹痛消失、腹部の圧痛、筋性防御ともに消失。

 

 ついでに脈が遅いのはよほどのアスリートでない限りは、慢性のひどい疲労の場合も出るので、副腎処置は慢性疲労症候群にも適応します。この方もストレスを感じたとはいえ、体の状態がもっと万全なら、体に支障をきたさない程度に受け止めきれたかも知れません。

 

 20代 女性 過敏性腸症候群

 

主訴:緊張するとお腹が痛くなる。

 

 通勤で電車からバスに乗り換えるのだが、バスに乗ったらトイレに行けないと思うとお腹が痛くなるのだとの事。去年からもう1年にもなる。病院で薬をもらうも一向に良くならない。それが辛くて仕事に行くのも怖いという。

 

 いわゆる過敏性腸症候群(過敏性大腸炎)である。病院でもそう言われたとの事。腸には、第3の自律神経といわれる腸管腹壁神経があり、精神や情動の影響が非常に出やすいと言われます。不安感やプレッシャーがどんどん症状を強めてしまうので、難しいと言われていますが、東洋医学治療では比較的治りやすいものに入ると思います。

 

 東洋医学的診察によると、脈は「細・沈 胃の気なし」。腹診は腹のどこを押しても痛いという過敏状態。その中でも、左大巨・左天枢・中脘・右季肋部の圧痛が強い。行間(+)・然谷(++)・魚際(+)。百会(+)・脛骨外縁狭小。

 明らかな交感神経過緊張状態です。はっきりと過緊張と胃弱を表しており、これじゃこういう症状が出ても仕方ないなという程です。他に瘀血反応も著明。

 

 既往に、喘息、発疹。喘息の既往がある方はアレルギー性の皮膚疾患が出ることも珍しくなく、扁桃の弱りがよく見受けられます。

今回も扁桃強化が必要かと、記録はしておく。

 

 処置は、まずは胃を強化する為に胃の気ツボ、瘀血を消すために、中封・尺沢。百会を瀉。自律神経の過緊張を抑えるために、腹部の中脘・天枢・気海に刺鍼。脈の「細・沈」消失。胃の気に力がこもる。腹部の圧痛は見事に消失。身体の反応が出やすいので、良くなりやすいと思われる。扁桃処置はせずとも大丈夫そうなので省略する。

 3日後、治療院に連絡があり「バスに乗っても何ともなかった!!」との事。年齢も若いこともあり、もう身体が回復に向かっているはずなので、これで治療は終了とした。

 

 いわゆる現代医学で難しいと言われているものが、このように簡単に治るのを何度も目にしている。科学的に分かることで明確な治療法を見出す現代医学と、身体の反応で治療法を見出す東洋医学は診察法も治療方針もかなり違う。しかし東洋医学の方が優れているというわけではなく、現代医学の科学的究明があるからこそ、東洋医学の治療をしている私も安全に安心して治療が出来るのである。西洋、東洋お互いに補い合える医療が広く認識される時代が今絶対に必要だと思う。