☆腰痛・膝・下肢痛

・35歳 男性 ぎっくり腰

・50歳 男性 右背部痛

・70代 女性 変形性膝関節症

・60代 女性 腰部脊柱管狭窄症

 

35歳 男性 ぎっくり腰

 

主訴:前屈不可・座った姿勢から立ち上がる時に腰に激痛。

 

 以前にもぎっくり腰をやったことがあるがここまでひどいのは初めてとの事。痛みの起きている場所、増悪姿勢、筋力の確認などから、腸腰筋のスパズムが起きていると予測。

 東洋医学的所見は、瘀血(-)、軟脈を呈している。扁桃リンパ節周辺のコリ著明。

 仕事の姿勢などから腸腰筋の短縮は起きやすいと言えるが、今回のぎっくり腰を起こす1週間前に風邪を引いたことなどから、扁桃機能は低下していたものと予測できる。今までは筋肉のスパズムが起きてもそこから免疫力によって回復していたのが、風邪による扁桃機能の低下から免疫が機能を果たさなかった、と総合的に判断。

 

 

 この方は既往歴もほとんど無い為、扁桃機能を賦活させることで免疫機能さえ戻せば、筋肉の余計なスパズムはなくなるだろうと予測し、扁桃処置。帰りは痛み無く、その日の夜に痛みが少し出るものの、翌朝には痛みは消えていたとの事。

 

50歳 男性 右背部痛

 

 主訴:子供の頃から続く右背部痛・右足土踏まずの痛み

 

 子供の頃から、背中の右側の肩甲骨辺りが重痛いとのこと。日により度合いは違うが、消えたことはあまりない、どうにかなるだろうかと来院。病院での度重なる検査でも結局分からず、頸椎が少し狭いのが原因ではないかと言われた。

 体格は比較的ガッチリしており、明るい性格の豪快なおじさんという感じ。仕事は自営で休むことはほとんどできない。随伴症状は、右足の土踏まずも同じくかなり前から痛い、仕事中に眼の奥が痛くなることがしばしば、など。

 

 現代医学的には大きな所見は見当たらない。ジャクソンやスパーリングテストなどでも頚椎所見は無いし、斜角筋などの胸郭出口所見も無い。望診で右背部の盛り上がりが少し診られる。筋肉のこわばりは当然あるが、何故こわばりやすいかを診なければならない。

 

 では東洋医学的な診察で。脈は、「弦・遅」。腹診はくすぐったがりなので、後回しにした。肺経の魚際が(+)(右>左)。右天牖(+)。

 

 脈から、肝機能の異常を推察。健康診断でもとくに無しとの事だが、症状、脈が一致しているので、これが原因ではないかと予測。

ちなみに肝の症状は右によく偏ることと、眼と肝臓も関係が深いので、右足土踏まず、眼の奥の痛みも同時に緩和していくだろうと思いながら治療を始める。

 

 遅脈なので、腹臥位から。左会陽と大腸兪に刺鍼。すると、それだけで右背部痛が少し楽だとの事。同時に土踏まずの痛みも減ってきた。それではとしつこく雀啄刺激。5分ほど続けていたら、痛くなくなったとの事。あまりの速さにこちらも驚く。土踏まずだけまだ少し残っていたので、右の会陽を加える。すると土踏まずの痛みも消えてしまった。当然患者さんご本人も驚いている。

 

 他にも処置しようと思っていたことがあったけれど、症状が消えたことで省略。毎回これくらいすんなりいくと有り難いんですけどね(笑)一応、子供の頃からの症状ということで、同部位にお灸を7壮だけ据えて終了とした。

 

 このように、健康診断で異常が出ない場合にも、(数字で表されるもの以外の事なのだろうか)身体に影響を与えるものがあるようで、科学で把握できないものが昔からの経験医学では分かるというものも数多くある。少しずつではあるが、認知を広めてゆきたい。

 

 

70代 女性 変形性膝関節症

 

主訴:歩行時の両膝痛、屈伸痛

 

 5、6年ほど前から急に痛くなり、整形外科にてレントゲンで変形性膝関節症と告げられる。それからヒアルロン酸の注射や、痛み止め、リハビリ運動など様々やってもあまり変わらないまま、もう諦めている状態。

 

 まっすぐ伸ばした状態では、やや伸展障害があるもののO脚、X脚変形は強度とは言えない。靭帯や半月板損傷は理学テストでは見受けられないが、関節を触察しながらの 屈伸、内外旋の際に軋轢音が有り、やはり関節の衝突がある様子。

 

 では東洋医学の視点の診察に。

 脈は、「洪・数」。腹は小腹不仁。鼡径部左右共に硬く圧痛(+)。右大巨~右天枢(+)。扁桃リンパ節周囲のコリ著明。

 喘息の既往あり(現在も吸入薬は続ける)。

 

 これらから総合的に、この方は扁桃機能が弱っていることで二次疾患を引き起こしやすかったであろうこと。それから副腎皮質ホルモンの分泌が少ないことで、炎症状態からの回復が芳しくないであろうこと。同時に交感神経の異常緊張も起こし易くなるために、痛みを通常よりも増して感じてしまうこと、そして腹腔内圧の低下に伴う内臓下垂があるだろうことが予測される。

 

 つまり、関節の変形による炎症の発生を助長しやすい状況であること。内臓下垂の影響による下肢への血流の阻害。これらを改善させてからでなければ膝にアプローチしても結局また同じことの繰り返しになると考えられる。

 

 治療は先に挙げた扁桃の強化ツボ、副腎機能の賦活ツボ、下垂の改善から行い、最後に膝関節の炎症をとるようにアプローチしていく。この場合はお灸が必須といえる。

 

 ☆運動器疾患(筋肉、関節)の痛みは意外とその局所以外に原因がある場合の方が圧倒的に多い。局所自体にも病変や変形はあるとしても、そこに至った原因にアプローチすることで、局所に触れる前に痛みが減る、ないしは無くなることも本当に多い。局所しか診ないのは本当の意味で治療と言えないのではあるまいか。

 

 膝の痛みは初回の治療後、左の膝の痛みは消失。右は少しあるとのこと。2回目(1週間後)、来院時左膝にほんの少し痛み有り、右膝は前回より楽とはいえまだ痛そう。

 3回目あたりから、脈が微妙に「滑脈」に変化。下垂治療を軽めにして扁桃強化のお灸を増やすことに。その日の施術後「滑脈」消失。「弦脈」に変化。とてもまじめな方なので、おそらく本来の脈が「弦」に近いのではないかと考えられる。

 週に1度のペースで治療をしておよそ2か月ほどで、左膝痛は消失、右膝痛はps10だったのが2まで減少。ちなみに気管支喘息は吸入薬せずに発作は出ていない。

 

 少しずつ治療間隔を開け現在は月に1度の治療でメンテナンス継続中。

 

 

60代 女性 腰部脊柱管狭窄症

 

主訴:腰臀部から左下肢の痛み、右膝痛

 

 一年半前に、総合病院でレントゲン、MRI診断を経て「脊柱管狭窄症」と診断される。病院にて痛み止めのお薬と胃薬を処方されるが、とくに好転はなく接骨院にて電気治療、マッサージされるもその時は軽い気がしても、すぐ戻る。旅行が好きだったのにもう行けないと諦めて無気力気味で来院した。

 

 右膝は、かばって歩くので痛み始めた様子。強い変形の所見はない。腰とおしりと左足は、しばらく歩いていると痛くなる。同じ姿勢を続けていると痛くなる。確かに狭窄症を思わせる所見もあるが、自転車の後も痛くなる、仰向けになれないなど、骨の変形以外にも増悪因子(悪くさせる原因)はありそうだと予測。理学テスト、筋力テストなどで明らかに腰のインナーマッスルは弱い。椎間関節性腰痛も有り。

 

 このように痛みや神経痛などの原因は一つでなく、複数にわたることが多い。それぞれの原因が足し算でなく掛け算で痛みを増していくことが多い。

 

 その他に、この方は胃がとても弱いので、すぐもたれたり下痢になったりするようです。身体を動かすエネルギーや治す元気などもやはり食事から得られるので、とても大切な部分でもあります。胃が弱いことで消化酵素も余計に働かねばならず、身体を治すのに使われる代謝酵素が出づらい構造はなるべく避けたいので、胃を強くすることも治療の大事な要素となります。

 

 では東洋医学の診察に。

 脈は「緊・数・前浮後沈・中脈弱い」。腹診で、胃の弱さ、免疫力の低下、交感神経の緊張が出ています。

 

 この方の診断としては、腹腔内圧の低下を改善させることが痛みの減弱につなげられると予測。加えて治癒の邪魔になる交感神経の緊張を和らげ、胃と免疫を強化して身体の状態が好転することで、自らの体が痛みを減らそうという方向にもっていくことがこの方の治療となる。

 

 治療は、まず胃を強くするツボと免疫強化のツボを用いて、それから腰のインナーマッスルを手助けするよう腹腔内圧を上げるよう鍼を打つ。

 初回はそれで終え、家でやるリハビリを教え、次回までそれを頑張ってもらうことにする。

 二回目(1週間後)の来院の際「胃の調子がすこぶる良い」とのこと。昨日まで下痢もない(今朝は少し)ので、今回は胃の処置にお灸も加えることに。腰臀部、左下肢痛と右膝は治療翌日はとても楽だったが、翌々日は痛かったとのこと。腹腔内圧の上昇させる治療を増やして二回目を終える。

 三回目(1週間後)。前回後翌日は右膝は痛かったが、3日目から右膝は痛みがまったく無くなってしまったとの事。腰臀部と左下肢は痛みは減るもののまだ痛い。

 10回目(初診から二か月半)。腰痛消失。臀部痛は前屈すると痛いとの事(狭窄症の症状とは少し違う様子)。左下肢痛は最近出ていないとの事。

 16回目(初診から三か月半)。歩く時は腰もお尻も痛くないが、草むしりすると痛い。しかしあまり気になってはいないとの事。以前よりも明るく前向きになっている。

 

 現在、初診から一年経つがほとんど痛みはないとのこと。たまに軽い痛みが出るので体調管理として通院中。旅行行くのも不安は無いとの事なので、現在は通院は本人の希望により続けている。

 

50代 男性 腰痛症

 

主訴:腰が痛い。(特に捻ると痛い)

 

 3か月ほど前に、マラソンのフォームを変えてから腰が痛くなったとの事。整形にてXP(レントゲン)診断。